おたふくかぜ(流行性耳下腺炎)の予防接種

 

おたふくかぜとはどのような病気なのでしょうか。

 おたふくかぜウィルスの感染により、耳のすぐ後ろにある耳下腺、又は顎下腺が腫れる病気です。多くは両側の耳下腺、顎下腺が腫れてきます。発熱はある場合とない場合があります。およそ1週間の経過で自然治癒しますが、子どもの場合の多くは軽く経過します。時に合併症としてウィルス性の髄膜炎を10%位の頻度で起こしてきます。頭痛、嘔吐、首が固くなる等の症状が出ます。髄膜炎と脳炎は、よく混同されますが、二つは異なる病気です。脳炎を合併しますと麻痺や、知能障害の後遺症を残してしまいますが、おたふくかぜに脳炎の合併はありません。難聴もおたふくかぜの合併症として知られています。原因不明の難聴の多くはおたふくかぜが原因と考えられています。また成人がおたふくかぜにかかると、膵臓炎、又は不妊症の原因となる卵巣炎、睾丸炎を合併症してくることが時にありますが、これらは子どもには、あまりみられません。

おたふくかぜの予防接種は必要なのでしょうか。

 おたふくかぜの予防接種は、公費負担がもらえる定期予防接種とは異なり、自費負担によって接種する任意予防接種といわれるものです。現時点においては接種の必要性はそれほど高くないと考えられています。しかし最近小児期に感染しない成人が増えています。成人期にかかりますと合併症の頻度が高くなること、また難聴の頻度が従来言われていたものより高いことから、日本も欧米のように、今後おたふくかぜも定期予防接種の対象になると考えられます。おたふくかぜ予防接種の有効率は約9割とされ、約1割前後の人は予防接種後もおたふくかぜにかかります。しかし予防接種した場合は軽くすむことから予防接種の効果はあるとされてます。もし6才までにおたふくかぜにかからなかった場合は、予防注射をした方がいいと思われます。

どのような副反応があるのでしょうか。

 おたふくかぜ予防接種の問題点はその副反応にあります。数年前に新3種混合ワクチン(MMR)が導入されました。MMRは麻疹、おたふくかぜ、風疹3種類の混合生ワクチンです。欧米では20年以上前からMMRが使用され、良好な成績が得られているため、日本でも導入されました。しかし髄膜炎の発生頻度が約1000人に1人と予想外に高かったことから、日本ではその後接種が中止されました。日本で副反応の発生率が高かったのは日本で使用したおたふくかぜワクチンの製品に問題があったためと考えられています。その発生頻度は、3種類の混合にしても、おたふくかぜワクチン単独にしても変わりありません。予防接種による髄膜炎は一時的なもので、後遺症を残すことはありません。それに対し難聴は一生続くものなので、髄膜炎のリスクはあっても予防接種は積極的に勧めるべきだとする意見が多くなっています。

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