最新の創傷治療

        -傷を消毒しない-

 傷(裂傷、挫傷、熱傷等)の治療としてまず消毒をすることが当然の治療として行われてきましたが、最近消毒により傷の治りがかえって悪くなることがわかってきました。広く使われている消毒薬は傷を化膿させる病原体を殺すだけではなく、傷を治すために必要な細胞まで殺すため傷が治りにくくなってしまうのです。傷が感染するのは、細菌がいるから感染するのでなく,壊死組織や異物があるから感染するのです。従って、傷の治療として消毒しても無意味で,まず壊死組織や異物(多くは泥)の除去を行わなければなりません。これらの除去でもっとも効果的なのが大量の水での洗浄です。消毒せずにそのまま十分洗浄するだけで大丈夫です 。消毒は傷の感染の予防効果もなく,傷の治癒を遅らせるだけ なのです。

 

傷ができると生体はどのように反応するのでしょうか。

(1)血小板が集まってきます。血が固まり、血小板から傷を治すために必要な生体の反応を誘導するサイトカインと呼ばれる物質が分泌されます。

(2)好中球やマクロファージが集まり、細菌などの病原体を取り除きます。壊死組織や異物が除去されていれば生体のこの反応だけで、感染は十分に防げます。消毒をすると、これらの細胞も殺されてしまいます。

(3)線維芽細胞、表皮細胞が集まり傷の表面を覆います。 これらの細胞は傷を治すために必要不可欠の細胞ですので、消毒でこれらの細胞を殺してはいけないのです。

病気の話あれこれへ戻る